マウスピース矯正のデメリットとワイヤー矯正と併用するメリット

従来の矯正治療は金属のワイヤーが目立ってしまい、お仕事の内容によっては矯正を諦めざるを得ないケースも多く存在していました。

矯正器具が目立たず、患者様への負担が少ないマウスピース矯正は良いことずくめのようにも思えますが、デメリットも存在します。

マウスピース矯正での失敗を防ぐために、治療開始前に知っておいていただきたい、マウスピース矯正のデメリットについて、解説します。

1. 1日20時間以上使う必要がある

1日20時間の装着

従来のワイヤー矯正と違い、患者様自身で矯正装置を外すことができるマウスピース矯正は、患者様の協力度によって、治療効果に差が出てしまうことがデメリットの1つです。

マウスピース矯正の種類によりますが、1日最低17~20時間程度の装着が必要です。食事や歯磨きの時、お仕事でどうしても必要な時以外はマウスピースを外してはいけません。

逆に言うと、食事の時にはマウスピースを外して、普段通りにおいしく食事をとることができ、歯磨きの時はしっかりと磨けるということでもあります。

2. 臼歯(奥歯)がかまないことがある

アライン(マウスピース型カスタムメイド矯正装置)は、常に歯の表面を覆っている装置なので、臼歯部が圧下しやすく、治療終了時、臼歯(奥歯)がしっかりかまない場合があることがデメリットの一つです。

しかし、これも時間とともに噛めるようになる場合が多く、補助装置で上下の歯をゴムで引っ張り出すことで改善が可能です。

3. 歯槽骨から歯根が出る現象が起き得る

また、マウスピース矯正では歯槽骨から歯根が出る現象が起き得るのですが、これはワイヤー矯正とは違い、歯を傾斜移動ではなく、歯体移動可能なためです。

歯を歯体移動可能なことはマウスピース矯正の大きなメリットであり、非抜歯矯正時にきちんとスペースを空けた状態で歯を奥歯の方に移動させることができます。(スペースがないのに無理に並べようとすると、前歯が前方に傾いてしまいます)

歯槽骨から歯根が出る現象も、しっかりと事前にCTなどで骨の厚みや移動方向を把握していれば避けることができます。

4. 難しい症例が苦手

難しい症例が苦手

患者さんの負担を大きく減らすマウスピース矯正ですが、適応症例(治療可能な歯並び)の多さでは、ワイヤー矯正にかないません。

抜歯をして大きくスペースが空いてしまうケースや、重度の叢生(デコボコの歯並び)、顎変形症など外科手術が必要な難症例の場合は、治療することができません。

ただし、近年は技術の改良や歯への力の加え方を工夫することにより、昔は難しいとされていた症例の治験例が多く発表されてきています。

治療工程の一部を舌側(裏側)矯正など従来のワイヤー矯正と併用して行うことで、マウスピース矯正だけでは治療が難しかった症例に対応できる可能性は高まります。

マウスピース矯正だけでは治療が難しい症例

マウスピース矯正は歯を平行に動かすこと(歯体移動)を苦手としているため、抜歯したことで生まれた大きな隙間を埋めるような、歯根の移動量が大きい症例は苦手としています。

また、上下の顎の位置が前後左右にズレている場合(上下顎前突)はマウスピース矯正では治療が難しくなります。

  • ・歯根の移動量が大きいケース
  • ・顎変形症など外科手術が必要なケース

非適応症の例

「重度の叢生」「左右に顎がずれている症例」「上下顎前突(骨格性)」のような症例ではマウスピース矯正単独ではなく、ワイヤー矯正の技術を併用するようになります。

マウスピース矯正だけでは治療が難しい例
重度の叢生
(そうせい)
左右に顎がずれている症例 上下顎前突
(じょうげがくぜんとつ)
歯のデコボコや重なり度合いが重度の状態 左右のあごがずれていることで噛み合わせがずれている状態 上下のあごの骨の位置に前後、左右のずれがある状態
重度の叢生 交叉咬合 上下顎前突

ワイヤー矯正と併用することで適応症例は増える

マウスピース矯正だけでは適応できない症例でも、最後の仕上げや治療工程の一部をワイヤー矯正と併用して行うことで、難症例でも治療ができる可能性はあります。

難症例でなくても、もしもの場合に備えて、マウスピース矯正だけでなくワイヤー矯正の経験も豊富な矯正専門医を受診することをおすすめします。

歯科医の経験によっても治療可能な範囲が変わる

ひと口にマウスピース矯正といっても、取り扱っているアライナーの種類や担当医の経験・技術によっても適応症例はかなり異なります

矯正治療は、矯正を専門に学んだことがなくても歯科医師免許さえ持っていれば行えるため、医師ごとの経験の差が出やすい医療行為です。

マウスピース矯正はワイヤー矯正ほど職人的な技術は要求されませんが、逆に言うと、「正しい適応診断を行えるか」が治療の成果を左右してしまう面があります。

あるクリニックではマウスピース矯正では治療できないと診断されても、別のクリニックではマウスピース矯正で治療ができると言われる場合もあります。

それは過去に似た症例を治療した経験や、取り扱っているマウスピース矯正の種類、矯正治療を専門に行っているクリニックなのか、矯正治療も行っている一般歯科なのか、ということにも左右されます。

正しい診断には歯科矯正に関する深い専門知識と、豊富な症例経験が必要になりますので、経験豊富な矯正専門医にあたるのが無難です。

篠崎直樹のコラム

豆知識コラム - マウスピース矯正は虫歯になりやすい?

マウスピース矯正は歯を長い時間マウスピースで覆う治療法のため、唾液の流れが悪くなり、虫歯になるリスクが高まる、と言われることがあります。

実際に患者さんの治療にあたっている立場からみると、マウスピース矯正で虫歯になりやすくなる印象はありません。

磨きにくい部分が出てしまうワイヤー矯正と比べ、装置も取り外して洗浄できるマウスピース矯正は、しっかりと歯みがきをできる方にとっては衛生的な治療法です。

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